「ほんっと、わかってないよね君って」
「え?」
普通なら女の子がよく口にするような台詞を、なんで僕がいわなきゃいけないのか。決して自分が女々しいとかそんなんじゃないと思いたい。
今更だけど、アカリはいろんな奴と仲がいい。
僕が今現在こうやって不機嫌になっているのもアカリと散歩をしているといつもいろんな奴らに声をかけられるからだ。女の子ならまだしも、男にだってそりゃあもうアカリは大人気なわけで。まぁ牧場やってるわけだしいろんな奴に好かれるのはむしろ良いことなんだろうけどさ。
正直、僕はおもしろくない。
「急にどうしたのーチハヤ!…あれ?何か怒ってる?」
「べつに」
並んで歩いていたはずがいつの間にか早足になってアカリを追い越してしまっていた。
それでもお構いなしに先々歩いていっていると後ろから少し怒ったアカリの声。
「もー言ってくれないとわからないよ!」
「…アカリはいろんな人と仲良くて、さぞ毎日楽しいんだろうね」
つい、嫌味を目一杯含んで言ってしまった台詞。
あぁ、なんで僕はこう素直になれないんだろう。別に彼女が悪いわけじゃないのに。
「…私が他の人と話しをするのが嫌なの?」
僕の少し後ろを歩いていたアカリは小走りでその距離を縮め、今度は怒った様子もなく少し困ったように笑いながら僕の顔を覗きこんできてそういった。
珍しく察しのいいアカリに少し驚いて目を反らしてしまったものの、彼女を困らせることができて嬉しい、なんて。
いつも僕ばっかり妬きもちを焼いているような気がしてなんだか面白くないから、アカリも少しは困ればいい。 そんなことを考えてる僕は、やっぱり女々しいのかも。
「・・・僕は、君がいればそれでいい」
目は反らしたままで、唐突にそんなことをいってみる。自分でもなんて嫉妬深くて子供なんだろうって思う。
だけど、そう言わずにはいられないくらいきっと僕は君を独占したいんだ。
「…私も、チハヤだけいればそれだけでいいよ。」
「…うそだ」
「嘘じゃないよ。確かにみんなと話すのは楽しいけどチハヤほどじゃないもん!」
嘘だよ。君は僕と違って素直だからみんなに好かれてるし、僕一人いなくたってどうってことないんだろ。そんな気休めの言葉なんて、いらないよ。
昔の僕ならそう言葉にできたはずなのに、どうしたんだろうね。今はひたすら怖いんだ、君に見放されるのが。
僕には君を繋ぎとめておく自信がないから。
あれこれ考えは浮かぶのに口にできる言葉が見つからなくて俯いてると、僕の横をふわっと風が通る。ふと顔を上げて少し前を見据えると、いつの間にか自分を追い越してそこから一メートルくらい先の所まで歩いて行っていたアカリが足をとめ、だってね、と今度は優しい笑みを浮かべながらこちらを振り向いた。
「チハヤ以外の人にしか話せないでしょ、チハヤの話しは!」
私はチハヤ一筋なんだからね!
そういって照れながら笑う君をみて、何だ、わかってなかったのは僕のほうじゃないか。そう、気付かされた気がした。
不安に飲み込まれて、君が僕に向ける笑顔がこんなにも優しくて愛おしいことに気づけなかったなんて、馬鹿みたいだね。そう思ったら自然に笑みがこぼれた。
鈍感なせいじゃなかったんだ?
(っていうか僕の何を話すことがあるわけ?)
(?チハヤの事以外で話すことなんてほとんどないよ?)
(・・・君と話す人が急に不憫に思えてきたよ)
2009/12/25
以前、
この恋、何色。さまへ企画参加させていただいたときに書いたチハアカ(っていうよりアカチh)
文の修正バージョンです。改めて読み返すといろいろおかしい・・・うおーすみませんっ
この二人はくっついたらくっついたで近すぎてモヤモヤしそうかなぁ〜と。
とくにチハヤなんかは小さいことで嫉妬しそうです(笑)
もどかしくも初々しい感じが私が思うチハアカにはピッタリな気がします。
あくまでチハヤはつんつんでれ!←
title by
確かに恋だったさま